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大津地方裁判所 平成2年(わ)186号 判決

本店所在地

滋賀県草津市大路三丁目四番五二号

有限会社幹コルモスプリント

右代表者代表取締役

小畑幹男

本籍

京都市東山区渋谷通大和大路東入四丁目下る妙法院前側町四二七番地

住居

滋賀県草津市東矢倉二丁目一番三八号

会社役員

小畑幹男

昭和二五年一二月七日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官新倉明出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社幹コルモスプリントを罰金一六〇〇万円に処する。

被告人小畑幹男を懲役一年に処する。

被告人小畑幹男に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社幹コルモスプリントは、滋賀県草津市大路三丁目四番五二号に本店を置き繊維品の染色加工業を営むもの、被告人小畑幹男は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人小畑幹男は、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  昭和六一年七月一日から昭和六二年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額は三八二二万五五四九円で、これに対する法人税額は一五〇九万三一〇〇円であるにもかかわらず、架空の経費を計上するほか売上の一部を除外するなどの行為により、その所得金額のうち三六三六万七七〇二円を秘匿した上、同六二年八月二七日、滋賀県草津市大路二丁目三番四五号所在の所轄草津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が一八五万七八四七円で、これに対する法人税額が五五万五七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額一五〇九万三一〇〇円との差額一四五三万七四〇〇円を免れ

第二  昭和六二年七月一日から昭和六三年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額は七〇一四万五六八〇円で、これに対する法人税額は二八四五万八九〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち六八一五万四四一二円を秘匿した上、同六三年八月二九日、前記草津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が一九九万一二六八円で、これに対する法人税額が五五万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額二八四五万八九〇〇円との差額二七九〇万三六〇〇円を免れ

第三  昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額は八七八七万二七五〇円で、これに対する法人税額は三五九一万九四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち八四八八万四一二四円を秘匿した上、平成元年八月二九日、前記草津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が二九八万八六二六円で、これに対する法人税額が八六万九六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額三五九一万九四〇〇円との差額三五〇四万九八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人小畑の当公判廷における供述

一  被告人小畑の検察官に対する各供述調書

一  被告人小畑の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  小畑久枝の検察官に対する供述調書

一  小畑久枝(六通)、川崎陽市(二通)、岡田妙子、神谷菊松、保田弘、竹澤三喜男、高田昌彦、吉永隆彦、迎正義、北村肇、奥村隆、山口昭弘、木村吉宏、牧野正男、竹田卓、竹内富治郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料

一  押収してあるノート五冊(平成二年押第四六号の1乃至5)

判示第一の事実について

一  被告人小畑作成の昭和六二年八月二七日付法人税確定申告書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲五)

判示第二の事実について

一  被告人小畑作成の昭和六三年八月二九日付法人税確定申告書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲六)

判示第三の事実について

一  被告人小畑作成の平成元年八月二九日付法人税確定申告書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲七)

(法令の適用)

被告人有限会社幹コルモスプリントの判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するところ、情状に鑑み同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、同被告人を罰金一六〇〇万円に処することとする。

被告人小畑幹男の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

被告人らの本件各犯行は、将来に備えて蓄財を急ぐあまり敢行されたもので、動機において格別酌むべき点はなく、逋脱税額は決して少額とはいえないうえ、逋脱率も平均約九七・五パーセントと極めて高率で、所得を隠匿するための様々な小細工を会社設立当初より三年間にわたり夫婦協力して行なつていたこと等に鑑みれば、被告人らの刑事責任は重大である。

しかしながら、他方、被告人小畑は本件犯行を心から反省し、何らの証拠隠滅工作も行なうことなく積極的に犯罪事実を認めていること、重加算税を分納により支払つており、本年末には完納する状況にあること、これにより特別予防の目的は相当程度達成されており再犯の危険性は低いと認められること、本件各犯行により被告人らは結果的には何らの資産も保有するには至つていないこと、被告人小畑には前科がないこと、長男の葬儀費用を自弁できなかったことから蓄財の必要性を感じるに至った被告人小畑の心情は理解できないではなく、秘匿した所得も同人が妻と協力して身を粉にして働いた結果得られたもので、格別ぜいたくな暮しをしていたわけではないこと等被告人らに有利な情状もあるので、以上を総合考慮して主文のとおり量刑した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 梶田英雄)

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